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<編集部からのコメント>
昨年の今頃は、アベノミクスによるインフレ経済実現への期待から、世の中全体にその裏返しとしての金利上昇への懸念が広がりました。インフレ=お金の価値が下がることですから、金利は上昇することになるわけですね。
逆に言えば金利が高ければ高いほど、その分だけお金の価値は下がることになります。
そうした金利上昇懸念をリードしたのはメディアやそこに登場するファイナンシャルプランナーなどの「専門家」ですが、記者自身は強い違和感を覚えていました。と言うのも日銀が「異次元緩和」と呼ばれる大規模な金融緩和をスタートさせたからですね。
金融緩和というのは金融市場に大量の資金を投下することで経済を活性化させる金融政策ですが、その過程では大きく金利が下がることになります。お金が余るわけですから、高い金利を払う必要がなくなるのですね。
こうした金融政策を通じて経済が過熱すればいよいよ金利が上昇していくわけですが、少なくともそれまでの間はむしろ金利が低下することになります。ステップとしてはこういうことですね。
1.景気低迷
↓
2.金融緩和=金利低下
↓
3.景気回復
↓
4.金融緩和終了=金利上昇
↓
5.景気過熱
↓
6.金融引き締め=金利がさらに上昇
繰り返しになりますが、さらなる金融緩和=異次元緩和が発表・実施されたということは「ステップ2」にあたるわけで、素直に考えれば金利が低下すると予想するべきです。
ところが多くのメディアや「専門家」は、この2、3のステップをすっ飛ばして「これから金利が上昇する」と早合点してしまったわけですね。まぁ、実際に異次元緩和発表後の4月から5月にかけて金利が急上昇するという、「市場の誤作動」が起きましたので、そう思うのもやむをえない面はあったのかもしれませんが。
ということでここ1年の長期金利の動きを振り返ってみるとこうなっています。
つまり・・・概ね順調に低下しているわけですね!本日(8月14日)の長期金利は0.50%ということで、0.4%台突入まで後もう一息という水準です。多少の紆余曲折はあったものの、結局は「異次元緩和」がセオリーどおり、金利を大きく引き下げる効果を発揮した、ということですね。
そのように金利が下がってくると、住宅ローン利用者の方々の金利観にも当然影響してくるわけで、最近実施された調査ではどれも回答者の金利上昇懸念が後退していることが示されています。
もっと言えば世界的な景気拡大も始まってからかなりの年月が経過しましたので、もしかするとこのまま金利が1度も上がることなく、景気後退局面に入っていく可能性すらあります。そうなればもちろん、金利は上がることはありません。実際、日本の金利はバブル崩壊以降の20余年、ずっと下がり続けてきたわけですからね。
日本円や日本国債の信用力が根底から覆るような事態が起これば別ですが・・・。
そのように昨年と打って変わって金利低下期待が高まっている現状では、当然、住宅ローン利用者の関心も長期固定金利タイプから当初固定金利タイプへ、当初固定金利タイプから変動金利タイプへと移っているものと思います。
わざわざ割高な金利を払ってまで金利上昇に備える必要が薄れるからですね。
加えて、ネット系銀行を中心に変動金利タイプの金利をさらに引き下げており、こうしたことも変動金利への関心を高めているのではないかと思います。
そんなわけで先日発表された、住宅ローン金利タイプのシェアを定点観測している住宅金融支援機構の、2014年5月・6月の「民間住宅ローン利用者の実態調査」をチェックしてみると、このような結果となっています。
何と!
前回の3月・4月と比較して、変動金利タイプ・当初固定金利タイプのシェアが減少する一方で、長期固定金利タイプのシェアが増えているという結果を発表しているのですね!
そんな馬鹿な・・・。
これまでの動きを振り返ると、昨年までは長期金利が上昇すれば固定金利のシェアが広がり、長期金利が低下すれば変動金利のシェアが広がるという、極めて常識的な動きを示してきた調査結果ですが、今年に入ってからどうも様子がおかしいですね。
回答者数は1ヶ月につき200名強とわずかですから、どういった人が回答者となるかで結果がぶれる可能性はあるものの、しかし金利が下がる中で長期固定金利のシェアが拡大するという結果は全く納得できません。
うがった見方をすれば、住宅金融支援機構はフラット35を販売している以上、長期固定金利が売れないと困るわけで、「恣意的」な集計をしているのではないかという疑念も出てきます。
それを示唆するようにこれまで1ヶ月刻みだった上記グラフも、今回から2ヶ月刻みとなっているのですね。ちなみに前回の調査結果はこのようになっていました。
この時は「こちらの調査で不可解なのは、2013年11月の調査や、2014年1月の調査など、数ヶ月に1回の割合で全期間固定タイプの割合がポッコリ上昇する結果が出てくることですね」と指摘させていただきました。
>>>選ばれている住宅ローン金利タイプは?皆の金利見通しは?
こうした不自然な動きについて冗談で「フラット35=全期間固定金利の住宅ローンを推したい住宅金融支援機構の陰謀か、はたまた機構の工作員の暗躍によるものか」とコメントしたわけですが、今回、いきなり2ヶ月刻みにしてそうした不自然な動きを隠してきたことを考えると、どうやらあながち冗談ではなかったようです・・・。
記者は決して「陰謀論」好きではないものの、住宅金融支援機構のこの調査一覧のページからもこの「2014年3月・4月期」データが削除されておりまして・・・これは偶然の一致ではないですよね?
>>>金利タイプ別利用状況
公的機関である住宅金融支援機構が世論操作に走っているとすれば・・・由々しきことですね。
ちなみに記者自身は、昨年夏からの金利低下傾向で住宅ローンの長期固定金利人気が低下していると信じて疑わないわけですが、その住宅金融支援機構が発表した、「業態別住宅ローンの新規貸出額及び貸出残高の推移」の「2014年1-3月期の概要」はこのようになっています。
つまり、増税前の駆け込み需要も重なり、大いに盛り上がった2014年1−3月期の住宅ローン市場は全体として前年比2.9%伸びたわけですが、そうした活況の中、「住宅金融支援機構(買取債権)」、つまりフラット35は驚きの−16.8%という二桁の減少で、「個人向け直接融資」も含めて「独り負け」しているわけですね!
もちろんそれはフラット35の商品性の問題ではなく、昨年の1−3月期は上記の通り金利先高観があった一方で、今年はそれがないばかりか、金利の低下傾向が鮮明になっており、そうした金利環境ではフラット35のような長期固定金利の需要が縮小するのは当然と言えます。
逆に金利が上昇してくれば、再度、長期固定金利タイプの需要が拡大してくるわけですからね。
このように細かな隠蔽のあとや、図らずも住宅金融支援機構自身が明らかにした住宅ローン市場全体の動きを俯瞰すると・・・やはりこの「民間住宅ローン利用者の実態調査」の結果は不自然ですね!
実際、2013年1月〜4月の回答結果と2014年1月〜4月の回答結果を比較すると、2014年の方が「長期固定金利のシェアが増えている」という結果となっていて上記の「新規貸出額及び貸出残高の推移」によって示された「独り負け」の実情と完全に矛盾していることになります。
やはり、恣意的な集計疑惑のニオイがプンプンするのは記者だけではないと思います。残念なことではありますが・・・。
良識のある読者の皆さんはどう判断されるでしょうか?
参考になさってください。